夏の肌荒れケアQ&A
記録的な酷暑が7月から続いている今年。普段は安定したノーマル肌の方でもさすがに肌状態が不安定になりやすくなっているようです。紫外線、汗、メイク、空気中の汚れなど、肌荒れを誘発するさまざまな要素に対してどのようなケアが必要か。夏のダメージから肌をレスキューする、その場しのぎではなく本当の意味で素肌を健やかにするケアについて、質問にお答えするかたちでお話ししましょう。
質問1–日焼けや汗が原因でしょうか…デリケートになった肌の調子を戻すには?
紫外線によっても、汗が肌表面に残っていることによっても、肌のバリア機能は低下してデリケート肌に近づきやすくなります。お家に帰ったあとにできるケアとしては、バリア機能を修復してくれるマグネシウムを肌から補いましょう。スキンケアでいうと「〜マグネシウム」「〜Mg」など、末尾にマグネシウムとつく成分が入っている化粧水などがおすすめです。ビタミンC誘導体とマグネシウムが結合した「リン酸アスコルビウムマグネシウム」といった成分もありますが、高価な原料でもあるためマグネシウムを補う目的として、おそらくマグネシウムの量がやや少なくなってしまいます。
実のところ市場には、マグネシウム配合の化粧品がそれほどたくさん存在していないのが現状です。マグネシウムはいわゆる”にがり”の主成分なので、お風呂ににがりを入れるというのも一つの方法です。また、入浴剤として売られているエプソムソルトは硫酸マグネシウムのことなので、にがり以外ではエプソムソルトも良いと思います。これは、統計データから導きだされた分析内容ですが、サーフィンなどつねに海水に触れるマリンスポーツをしている人は、真っ黒に日焼けしていてもシミになる方が比較的少ないそうです。その理由として、海水に含まれるマグネシウムのバリア修復機能が関係しているのではないかと、研究者の間では考えられています。
質問2–紫外線を浴びると皮膚常在菌が死んでしまうというのは本当ですか?
皮膚常在菌が全滅するというわけではありませんが、これは本当です。紫外線には殺菌効果があります。病院などにある殺菌灯も、実は紫外線によるものなのです。正確にいうと、紫外線を浴びると皮膚常在菌が不活性な状態となります。皮膚常在菌の中でも美肌菌といわれる表皮ブドウ球菌は、肌の潤いの鍵となっているグリセリンと短鎖脂肪酸を作りだしてくれています。皮膚常在菌が不活性になるということは、グリセリンと短鎖脂肪酸が生み出されにくくなるので、肌の乾燥、バリア機能の低下へと繋がっていきます。
これに対してできることは、美肌菌である表皮ブドウ球菌のエサとなってくれるオリゴ糖が配合された美容液などを使うと良いでしょう。皮膚常在菌のバランスを整える意識でスキンケアをすることは、夏の肌荒れの進行を食い止めると同時に、秋から顕著になる乾燥予防としても重要です。
質問3–夏の肌ダメージに対してできるインナーケアがあれば知りたいです。
インナーケアには、いわゆる活性酸素の除去に役立つもの、抗酸化成分を摂れるものが良いと思います。ビタミンCやビタミンEなどのサプリメント、ルイボスティーのようなお茶などでも良いと思います。ただし、抗酸化成分を摂っていることで日焼けを防げるわけというわけではありません。抗酸化成分は、陽射しを浴びた時に過剰に発生した活性酸素を減らしてくれるので、その後の肌荒れ、真皮層のコラーゲン破壊、乾燥などを防ぐのに役立ちます。
質問4–日焼け後のアフターケアも兼ねた冷やすケアで肌荒れを防げますか?
肌を冷やすことによってほてり感は和らぐと思いますが、紫外線を浴びたことによる炎症伝達物質の発生を止められるわけではありません。肌を冷やすことよりも、やはり質問2や質問3でお答えしたような、肌からマグネシウムを補うスキンケアや皮膚常在菌を整えるケアのほうが、肌荒れ脱出の近道と思います。そして前回のコラム「紫外線ダメージで免疫力が低下!? 夏バテ対策としてもUVケアを」でお伝えしたように、炎症物質が発生し続ける流れにブレーキをかけるには、併行して日焼け止めを徹底することを忘れないようにしてくださいね。
茂田正和
スキンケアアドバイザー・化粧品開発者・日本皮膚科学会正会員
日東電化工業ヘルスケア事業部にて開発責任者を務めるほか、バランスケアアソシエーションを主宰する。皮膚科医、ヘアメイクアップアーティスト、美容ライター、料理研究家とともに真の美容のためのライフスタイルを提案するセミナーやワークショップを運営。